正月にいわしを食べる意味とは?田作りや節分との関係について

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正月にいわしを食べる意味とは?田作りや節分との関係について

お正月が近づくと、重箱にきれいに詰められたおせち料理に入っている田作りや、2月の節分の時期に玄関先で見かける柊鰯(ひいらぎいわし)など、いわしに関連する行事や風習をよく目にするようになりますよね。

ふと、「どうして正月や節分という大切な節目に、特別感のある鯛やブリではなく、身近な大衆魚であるいわしが関係しているのだろうか?」「その由来や理由はなぜだろうか?」と疑問に思うことも多いのではないでしょうか。

普段、何気なくお箸を伸ばして食べていたり、季節の飾りとして飾ったりしているいわしですが、実は日本の古い歴史や先人たちからの温かい願いがたっぷり詰まった、とても奥深い存在なんです。

私自身、この歴史や隠された意味を知った時は「なるほど!だからわざわざいわしを使うのか!」と深く腑に落ちたのを覚えています。

この記事では、正月といわしが持つ意味や、おせち料理の定番である田作りの秘密、そして一見無関係に思える節分との意外な繋がりについて、分かりやすく紐解いていきますね。

この記事を読んでわかること
  • おせち料理に入っている田作りとごまめの違いや歴史的な背景
  • 正月と節分の行事がいわしを通してどのようにつながっているか
  • 玄関先に飾る柊鰯の正しいお作法と魔除けのメカニズム
  • おいしく健康的に正月や節分のいわしを楽しむための知恵

正月におけるいわしの意味と田作りの由来

お正月のおせち料理に欠かせない甘辛い小魚の佃煮、「田作り」。

つやつやと輝くあの小魚の正体が、実はいわし(カタクチイワシ)だということをご存知でしょうか。

まずは、お正月といわしの関係性を紐解く第一歩として、田作りの由来や込められた意味について一緒に見ていきましょう。

おせちの田作りとごまめの違い

おせち料理に入っている小さな魚の佃煮は、地域やご家庭によって「田作り」と呼んだり「ごまめ」と呼んだりしますよね。

これ、実はどちらも同じカタクチイワシの稚魚を乾燥させたものなんです。

呼び名が違うから別の料理かな?と思うかもしれませんが、基本的には同じ食材を指しています。

ただ、それぞれの名前に込められた意味や歴史的な背景が少し異なっているのが面白いところですね。

関東地方では主に「田作り」、関西地方では「ごまめ」と呼ばれることが多い印象ですが、どちらも新年の吉祥をもたらす大切なおせちの一品であることに変わりはありません。

ちょっとした豆知識
田作りは「尾頭付き(おかしらつき)」の魚として、頭から尻尾まで丸ごと食べられることから、縁起が良いハレの日の食材として重宝されてきました。

切り身ではなく、完全な姿のままいただくことで、物事を最初から最後まで全うするという縁起担ぎにもなっているんですよ。

五穀豊穣を願う田作りの歴史

では、なぜ海で獲れる小魚に「田作り」という畑や田んぼに関連する名前がついたのでしょうか。

昔の日本では、冬の間に獲れた大量のいわしを天日で干して、細かく刻んだり灰に混ぜたりして、田畑の肥料(「干鰯(ほしか)」と呼ばれていました)として使っていました。

このいわしの肥料をまいた田んぼからは、驚くほどたくさんのお米や作物が収穫できたと言われています。

一説には「五万俵もの米がとれた」という言い伝えもあるほど、その肥料としての効果は絶大だったようです。

田んぼを豊かに作り上げることから「田作り」と呼ばれるようになり、お正月には「今年も豊作でありますように」という五穀豊穣の願いを込めて食べられるようになりました。

また、一部の地域ではこの田作りに使われる煮干しを鏡餅に飾るという、とても興味深い風習もあります。

海産物であるいわしに豊漁や豊作の願いを託した、日本ならではの素敵な文化ですね。

ごまめの漢字に込められた子孫繁栄

もう一つの呼び名である「ごまめ」についても、素敵な由来があります。

ごまめの由来には、主に3つの説があると言われています。

1つ目は、先ほどの「五万俵のお米」にちなんで、縁起の良い当て字として「五万米」や「五真米」と書かれるようになったという説です。

2つ目は、日本語の「まめ」という言葉が持つ「健康(達者)」や「まめに働く」という意味に結びつき、家族の無病息災や家内安全を願うようになったという説。

黒豆などにも共通する「まめ」に暮らすという願いですね。

3つ目は、カタクチイワシが海で大きな群れを作って泳ぐ姿から、「細群(こまむれ)」という言葉が変化したという説です。

いわしは一度にたくさんの卵を産む多産な魚であることから、子孫繁栄の縁起物としても愛されてきました。

宮中文化にみる格式高い別名

庶民の農作業や肥料という、非常に身近で現実的なルーツを持つ田作りですが、実は日本の宮中文化においても非常に格式高い扱いを受けていました。

江戸時代の京都御所で行われていた豊作祈願の儀式などでは、ごまめのことを「ことのばら(ことのはら)」という女房詞(宮中に仕える女性たちが使っていた雅な呼び名)で呼んでいた記録が残っています。

泥臭い農作業の象徴でありながら、宮中の洗練された儀式料理としても愛されていたという二面性が、お正月におけるいわしのステータスの高さを物語っていますね。

現代のおせちにおいても、その特別感はしっかりと受け継がれています。

関東と関西における祝い肴三種の地域差

おせち料理の基本となるのが「祝い肴三種」です。

これとお雑煮さえあれば、立派にお正月のお祝いができると言われるコアなセットですが、ここでも関東と関西で明確な違いが見られます。

以下の表で、東西の文化の違いを分かりやすく比較してみました。

比較項目関東地方(武家社会の文化)関西地方(公家・商人社会の文化)
祝い肴三種数の子、黒豆、田作り数の子、黒豆、たたきごぼう
味付けの傾向濃口醤油や砂糖で甘辛く、日持ちを重視出汁を効かせ、素材の風味と色を活かす
お雑煮すまし汁に焼いた角餅白味噌に焼かない丸餅

関東では武家社会や農耕社会の価値観が強く残り、五穀豊穣を祈る「田作り」が必須とされています。

一方、関西では地中深く根を張って家業安泰や家の基礎が揺るがないことを願う「たたきごぼう」が選ばれることが多いです。

とはいえ、関西でも田作り自体はおせちの一部として広く食べられており、お米の豊作は住む場所を問わず日本人共通の願いだったことが分かりますね。

正月と節分を繋ぐいわしの意味と現代の伝統

お正月の次はいわしが大活躍する「節分」の話題です。

お正月と節分、時期が全く違うのになぜどちらもいわしが登場するのでしょうか。

そこには、昔の人が使っていたカレンダー(旧暦)の不思議なカラクリが隠されています。

旧暦の大晦日にあたる節分といわしの関係

現代の暦(太陽暦)では1月1日が「お正月」で、2月3日頃が「節分」と、全く別の独立した行事のように思えますよね。

でも、昔の旧暦では「立春(2月4日頃)」から新しい年がスタートすると考えられていました。

つまり、立春の前日である「春の節分」は、一年の最後の日である「大晦日」と同じだったんです。

季節が変わり、新しい年を迎える境界のタイミングは、邪気や病魔(鬼)が人間界に入り込みやすいと信じられていました。

そのため、旧大晦日である節分の夜に、強力な魔除けを行ってから清らかな状態で新年(正月)を迎えようとしたのが、節分の行事の始まりです。

正月と節分は、「新年を迎える一連の準備」として深く繋がっているんですね。

柊鰯が持つ魔除けと防衛のメカニズム

節分の魔除けとして有名なのが「柊鰯(ひいらぎいわし)」ですね。

「焼嗅(やいかがし)」とも呼ばれるこのお飾りには、鬼を撃退するための2つの強力なバリア機能が備わっています。

1. 嗅覚のバリア(いわしの煙と匂い)
いわしの頭を焼く時に出る強い煙と独特のにおいを鬼が極端に嫌がり、家に近寄るのを諦めさせます。

2. 視覚と物理のバリア(柊の棘)
柊の葉にある鋭いトゲは「鬼の目突き」とも呼ばれ、無理に入ってこようとする鬼の目を直接刺して退散させます。

昔の人々は、「臭いが強いもの」と「尖ったもの」には魔を遠ざける強力な力があると信じていました。

「鰯の頭も信心から」ということわざも、こんな素朴な材料でも心から信じれば尊い魔除けになる、というところから生まれているんですね。

玄関の外に飾る柊鰯の正しいお作法

いざ柊鰯を作って飾ろうと思った時、「どこにどうやって飾るの?」「いつまで飾っておくのが正解?」と迷ってしまいますよね。

ここで、伝統的な正しいお作法をご紹介します。

まず、飾る場所は絶対に「玄関の外側(戸口や軒先)」です。

鬼が家の中に入る前に外で追い払うための防衛バリアなので、室内に飾ってしまっては意味がありません。

また、飾る期間については地域によっていくつかパターンがあります。

  • 節分の夜だけ飾って、翌朝(立春)に速やかに片付ける
  • 小正月(1月15日頃)から節分の日まで前もって飾る
  • 節分の日から2月いっぱいまで飾って邪気を警戒する

処分の際のマナーと注意点
役目を終えた柊鰯をそのままゴミ箱に捨てるのは、魔除けへの敬意を欠く行為とされています。

一番望ましいのは神社の「お焚き上げ」ですが、自宅で処分する場合は、塩や日本酒を軽く振って清め、「邪気を払ってくれてありがとう」と深い感謝の気持ちを込めて白い半紙に包み、お住まいの地域のゴミのルールに従って処分してくださいね。

西日本を中心に広まる節分いわしを食べる風習

飾るだけでなく、節分にいわしを「食べる」風習も、関西をはじめとする西日本を中心に根付いています。

最近では恵方巻きのブームと一緒に全国的に知られるようになりましたね。

定番の「いわしの塩焼き」で丸ごといただくのはもちろん、独特の生臭さが苦手な方やお子様向けには、生姜を効かせた「いわしの梅煮」や「竜田揚げ」「つみれ汁」などにアレンジするのもとてもおすすめです。

現代では、いわしの丸干しを洋風のハーブオイル漬けにした缶詰を活用したり、トマト煮込みにしたりするなど、忙しいライフスタイルに合わせて手軽においしく伝統を取り入れる工夫が広がっています。

体内を浄化する全国各地の節目料理

お正月や節分という大切な節目には、いわし以外にも、体内をリセットして無病息災を願うユニークな行事食が日本各地に存在します。

例えば、栃木県などで鮭の頭と大豆を煮込む「しもつかれ」や、四国地方で胃腸の掃除のために食べる「こんにゃく(砂おろし)」、島根県で老廃物を出す願いを込めた「ナマコの酢の物」などがあります。

また、恵方巻きもその年の福を司る方角を向いて無言で食べるという伝統がありますが、最近ではお子様の安全や家族での楽しい会話を大切にしながら、柔軟に楽しむご家庭も増えている印象を受けます。

田作りといわしが持つ現代の栄養学的メリット

歴史的な魔除けや縁起物としての意味だけでなく、いわしを食べることは現代の栄養学的に見ても非常に理にかなっています。

田作り(カタクチイワシ)には、成長期の子供や高齢の方の骨格維持に必要なカルシウムがたっぷり含まれています。

さらに、いわしなど海産魚の脂質に多く含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)は、血管障害を予防するほか、アレルギー反応を抑制する作用などがあるとされています。

(出典:厚生労働省『魚介類の摂食と水銀に関する対応について』)

日照時間が減ってビタミンDが不足しがちな冬場に、ビタミンDとカルシウムを同時に摂取できるいわしを食べることは、骨粗しょう症予防にも繋がる素晴らしい先人の知恵なんです。

健康と食事に関する注意点
伝統的な田作りは甘辛く煮詰めるため、どうしても糖分や塩分が高くなりがちです。

一度にたくさん食べるのではなく、毎日少しずつ箸休めとしてつまむか、現代風のオイスターソースを使った減塩レシピなどを取り入れてみてくださいね。

※なお、ここで紹介した栄養学的なメリットや数値データはあくまで一般的な目安です。

病気の予防効果を保証するものではありませんので、正確な情報やご自身の健康に関する最終的な判断は、かかりつけの医師などの専門家にご相談ください。

豊かな暮らしに生かす正月のいわしの意味まとめ

ここまで、お正月の田作りから節分の柊鰯まで、いわしに込められた深い意味や願いについてお話ししてきました。

単なるおせちの一品や魔除けのお飾りだと思っていたいわしが、実は「五穀豊穣」「子孫繁栄」「無病息災」といった、昔の人々の切実で温かい祈りとしっかりと繋がっていたんですね。

そして旧暦のシステムを知ることで、正月といわしの関係、そして節分といわしの風習が、実は同じ「新年を迎えるための大切な儀式」として根底で深く繋がっていることも見えてきたかなと思います。

今年の冬は、そんないわしに込められた願いや歴史の重みに少しだけ思いを馳せながら、美味しく健康的に伝統行事を楽しんでみてくださいね。