正月にするめを飾る意味とは?語源や縁起物としての役割について

お正月が近づくと、スーパーの特設コーナーなどで立派なするめを見かけることが増えますよね。
でも、どうして正月にするめを飾る意味があるのか、その理由や由来について疑問に思ったことはありませんか?
お雑煮の出汁に使ったり、昆布と一緒に結納の品として用意されたり、鏡餅の下に敷いたりと、実はするめって日本人の暮らしに深く根付いている縁起物なんですよ。
あたりめと呼ぶこともありますが、これにも江戸時代から続く面白い歴史が隠されているんです。
私自身も最初は「ただのおつまみでは?」なんて思っていた時期がありましたが、知れば知るほど奥深い魅力があることに気づかされました。
この記事では、そんなお正月に欠かせないするめの意味について、飾り方や美味しい食べ方も含めて詳しくお伝えしていきますね。
きっと、今年のお正月はするめを見る目が少し変わるかなと思います。
- するめの語源や忌み言葉を言い換えた面白い歴史的背景
- 結婚や金運など家庭の幸せを願う縁起物としての深い役割
- 鏡餅や神棚へお供えする際の正しい飾り方や向きの作法
- 正月明けにお下がりを美味しく安全にいただくための知恵
正月に飾るするめの意味と歴史的背景
それではさっそく、正月に飾るするめの意味と歴史的背景について詳しく見ていきましょう。
古くから神事や儀式に欠かせなかったするめには、私たちが想像する以上に強い祈りと先人たちの知恵が込められているんです。
これを読めば、ただの乾物とは思えなくなりますよ!
烏賊とするめの語源にまつわる諸説
日本におけるイカの食用や加工の歴史はとても古く、保存食として重宝されてきました。
まず、イカを漢字で「烏賊」と書くのは、中国の故事で「海面に浮かんで死んだふりをし、近づいてきた烏(カラス)に巻きついて食べた」という伝説に由来します。
名前の語源としては、威厳のある風貌から「いかめしい(厳めしい)」という言葉に由来する説や、強調を表す「い」に食物を意味する「か」が結びついたという説などがあります。
また、白くて固い身からきているという説もあり、昔の人が海に生きる生物をよく観察していたことが分かりますね。
一方で「するめ」という呼び方にも、民俗学や言語学的に面白い説がいくつか存在します。
代表的なものを表にまとめてみました。
| するめの語源の諸説 | 由来や背景 |
|---|---|
| 「干す(する)」古語・方言説 | 干す、乾燥させるという意味の古語・方言「する」に「目(め)」がついたという説。言語学・語源学において最も有力とされています。 |
| 墨群れ(すみむれ)転訛説 | イカが墨を吐いて群れをなす習性「スミムレ」が時代を経て「スルメ」に変化したという俗説の一つです。 |
| 古代の干しタコ(イイダコ)起源説 | 平安時代の辞書『和名類聚抄』などの記述に基づき、古代に獲れた小さなタコ(イイダコ等)の干物を「須留女」と呼び、それが後に干しイカを指すようになったという説。 |
| 「擦る(すり減る)」大和言葉説 | 生のイカが乾燥する過程で水分を失い、薄くすり減っていく(ペラペラになる)様子を表す「擦る」から名付けられたとする説。 |
するめの格付け
実は、するめは原料によって等級があるのをご存知ですか?
剣先いかを使ったものが最高級品の「一番するめ」、するめいかを使ったものが「二番するめ」として扱われてきました。
贈り物や儀式の重さによって使い分けられていたんですね。
昔の人のこだわりってすごいなと思います。
あたりめと言い換える忌み言葉の文化
するめのことを「あたりめ」と呼ぶのを聞いたことがあると思います。
居酒屋のメニューでもよく見かけますよね。
これには、江戸時代初期の言葉遊びと縁起担ぎが関係しているんです。
歌舞伎などの演劇界や花柳界、そして博打を好む人たちの間で、するめの「する」という響きが「お金を擦る(失う)」「財布を掏る(盗まれる)」ことを連想させるため、非常に不吉だとされました。
そこで、悪い言葉を避ける「忌み言葉」の文化として、「擦る」の反対である「当たる」を用いて、縁起良く「あたりめ」と言い換えるようになったのです。
すり鉢を「あたり鉢」と呼ぶのと同じで、ネガティブな言葉をポジティブに変換する昔の人の素敵な知恵ですね。
大相撲の土俵祭りに隠された呪術的な力
するめが持つ縁起の強さは、日本の国技である相撲の伝統にもしっかりと根付いています。
大相撲の本場所前日に行われる「土俵祭り」という神事をご存知でしょうか。
これは場所中の安全を祈願する儀式ですが、その中の「縁起物鎮め」において、土俵の中央に掘られた穴にお神酒や勝栗、洗米などと一緒に、するめが埋められます。
するめは邪気を退ける強力な結界の役割を果たしており、神聖な場を守るための重要なアイテムとして見なされている証拠かなと思います。
力士たちが熱戦を繰り広げるその足元に、するめが眠っていると思うと、少し親近感が湧きますよね。
寿留女の漢字が表す家庭円満と女性の徳
お正月や慶事にするめを用いる際、縁起を担いで漢字で「寿留女」と表記することがあります。
この美しい当て字には、婚姻関係の持続と家系の繁栄への強い祈りが込められているんです。
- 寿:長寿と幸福をその家にいつまでも留めること。
- 留:嫁いだ女性が一生その家に留まり、夫婦として添い遂げること。
- 女:良き妻として家庭を安泰に導き、子孫を繁栄させること。
するめは一度乾燥させると驚くほど長く保存がきくため、「するめのように長持ちする関係であってほしい」という願いの象徴となりました。
噛めば噛むほど味が出るのも、「年齢を重ねるごとに味わい深い夫婦関係になれるように」と例えられる素敵なポイントですね。
結納品に寿留女と子生婦が選ばれる理由
結婚の約束を交わす伝統的な結納において、寿留女は欠かせない品目の一つです。
正式な結納品は9品目ありますが、寿留女は単体ではなく、昆布を意味する「子生婦(こんぶ)」や、白髪になるまで添い遂げる願いを込めた「友志良賀(ともしらが)」などとセットになることで、おめでたい意味をさらに強めます。
結納品を省略する場合でも残る寿留女
現代では結納品を7品目や5品目に省略することも多いですが、品数を減らしていく過程でも「寿留女」と「子生婦」の組み合わせは最後まで残される傾向にあります。
持続性を表す寿留女と、生産性(子宝)を表す子生婦は、家庭の基盤としてそれだけ重要視されているということですね。
お足が多い形態から連想された金運向上
するめの意味は、家庭円満だけでなく経済的な豊かさにも結びついています。
室町時代から江戸時代にかけて、人々はお金のことを俗に「お足(おあし)」と呼んでいました。
イカは足が10本もあるため、「足が多い」=「お金(お足)が多い」という連想から、新年の商売繁盛や千客万来、家計の安泰を願う強力な金運の縁起物として飾られるようになりました。
昔は年始の挨拶に来たお客さんに、昆布やするめを半紙に包んで手渡す「御手掛(おてかけ)」という歓迎の作法もあり、人と人、富と縁を結ぶアイテムだったことが伺えます。
(ちなみに、総務省統計局『家計調査』などでも、イカは常に日本の食卓や家計を支える重要な水産物として記録されており、昔から現代に至るまで私たちの生活を支え続ける富の象徴とも言えますね。)
正月にするめを飾る意味と美味しい食べ方
ここまでは歴史や語源などを中心にお話ししてきましたが、ここからは、正月にするめを飾る意味と美味しい食べ方について、より実践的な内容をお伝えしていきますね。
神棚への正しい供え方から、お正月が終わった後の消費方法まで、無駄なく楽しむための知恵をご紹介します。
鏡餅飾りや神棚への正しい供え方と向き
お正月飾りの主役である鏡餅。
三方(さんぽう)と呼ばれる台に飾る際、するめは非常に重要なポジションに配置されます。
一般的なルールとしては、お餅と三方の間に敷く「裏白(うらじろ)」の上、もしくはお餅のすぐ下にするめを平らに敷き詰めます。
神棚にお供えする場合も含め、するめの向きには神道における作法があります。
- 頭の向き:胴体の尖った先端(剣先)が、神前の中心を向くようにします。
- 裏表の向き:神道におけるお供え物(神饌)の基本作法では、海のものは「腹を神様側に向ける」とされることが多く、するめの場合も吸盤のある腹側を上に(神様に向けて)飾るのが一般的です。(※地域や流派によって異なる場合もあります)
- 足の広げ方:金運の象徴である「お足」がたくさんあることを神様に美しく見せるため、10本の足を手前に扇状にきれいに広げて飾ります。
しめ縄が持つ常世と現世を隔てる結界
するめは、しめ縄と一緒に飾られることも多いです。
古くから恵比寿様を祀る棚では、しめ縄にするめや昆布を吊るして飾る習慣がありました。
しめ縄自体が、私たちの日常の世界である「現世(うつしよ)」と、神聖な世界である「常世(とこよ)」を隔てる「結界」の役割を持っています。
飾る際は、神道で神聖とされる「左側(向かって右側)」に太い部分(綯いはじめ)が来るように飾るのが基本です。
間に挟む白い「紙垂(しで)」は稲妻を表しており、豊作祈願の意味が込められています。
ここにするめを合わせることで、より強力な縁起物空間が完成するんですね。
ちなみに、飾るタイミングとして大晦日に慌てて飾る「一夜飾り」は神様に失礼とされているので、28日ごろまでにゆとりを持って飾るのがおすすめかなと思います。
松の内の明けや鏡開きに下ろすタイミング
お正月飾りとして役目を終えたするめは、決してそのままゴミ箱に捨ててはいけません。
年神様の恵みが宿った「お下がり」として、家族で美味しくいただくのが正しい作法です。
下ろすタイミングは地域によって異なりますが、年神様がいらっしゃる「松の内」(1月7日または15日)が明けた時や、1月11日(関西では15日や20日)の「鏡開き」の際にお餅と一緒に下ろすのが一般的です。
北海道や東北の一部では、大晦日の夜に「年取り膳」として一足早くいただく文化もあるんですよ。
地域ごとの違いを知るのも面白いですよね。
どんど焼きのご神火で炙る無病息災の信仰
鏡開きを終えた正月飾りは、1月15日の小正月に地域の広場や神社で行われる「どんど焼き」でお焚き上げされます。
この炎は非常に神聖なものとされており、この火祭りのご神火で、竹竿の先に吊るしたするめやお餅を直接炙って食べる習慣が全国各地に残っています。
無病息災の強力な信仰
どんど焼きの炎で焼いたするめを食べると、「一年間風邪を引かない」「若返る」「無病息災で過ごせる」と古くから信じられてきました。
神様を天にお見送りする聖なる火で浄化されたするめを体内に取り込むことで、健康長寿の祈りが完成するのです。
少し焦げたするめの香ばしい匂いが、お正月の締めくくりを感じさせてくれますね。
数の子の松前漬けが一品で万能とされる訳
お正月にするめを美味しく食べる定番料理といえば、北海道発祥のおせち料理「松前漬け」ですよね。
実はこの松前漬け、おせちの中に一皿あるだけでお正月のおめでたさを網羅できる、非常に万能な縁起物なんです。
- 数の子:卵の多さから「子孫繁栄」を祈願。
- するめ(寿留女):家庭円満、健康、そして足の多さから「金運向上」を祈願。
- 昆布(子生婦):「喜ぶ」にかけ、末永い健康長寿を祈願。
この三大縁起物が合わさった松前漬けは、まさにハレの日にふさわしい最高の一品と言えますね。
ご飯のお供にもお酒のつまみにもぴったりなので、我が家でも毎年あっという間になくなってしまいます。
するめを食べる際の安全性に関する注意
乾燥したするめは非常に硬いため、お年寄りや小さなお子様が食べる際は喉に詰まらせないよう、細切りにして提供するなど十分にご注意ください。
また、するめは思いのほか塩分を含んでいます。
むくみや血圧への影響を防ぐためにも、食べ過ぎには注意し適切な水分補給を心がけましょう。
健康に不安がある場合の最終的な判断は、かかりつけの医師など専門家にご相談ください。
現代に問いかける正月のするめの意味のまとめ
お正月にするめを飾って食べるという文化は、単なる言葉の語呂合わせや昔の迷信ではありません。
自然からの贈り物である海の幸を乾燥させ、長期間保存できる形にした上で、それを家族の絆の「不変」や経済的な「繁栄」のシンボルとして見立てた、日本人の素晴らしい知恵の結晶です。
飾った後はお下がりとしていただき、硬いするめも出汁をとったり、天ぷらや炊き込みご飯にアレンジして最後まで使い切る。
こうした一連のサイクルは、現代社会が目指す「サステナビリティ(持続可能性)」や食材を無駄にしないライフスタイルそのものだと言えますね。
今年の新年は、するめに込められた自然への感謝や家族を思いやる温かい心を感じながら、美味しく味わってみてはいかがでしょうか。